アメリカの7倍?!

多用な食物が彩り豊かに並ぶ食品売り場。季節を問わず手に入る大きく育った美しい野菜たち。日々、より豊かになる食生活の裏で、今、日本の農作物の農薬使用量は、アメリカの7倍であると言われています。

「豊かな自然と安全な食べ物」というイメージを持つ国産農産物に、多量の農薬が使われている事実は、「残留農薬」の問題として、過去、大きく問題となり、また今、安全な食生活を願う方々が関心を寄せています。
しかし、巨大都市を中心に営まれる生活を考えても、農薬の使用の有無だけでは、「安全」も「環境」も語る事は出来ません。

まずは、」農薬と安全性。そして、田畑に棲む生物との関係について、まずは少しだけ考えてみたいと思います。

広がる不安

1940年代に農薬の歴史は始まります。
当初農薬は、DDT、BHC、パラチオンといった毒性の強いものが多く、人に対する害はもちろん環境汚染の原因でした。この事態を受け、1960年から1970年頃より、残留農薬の安全基準値の設定、農薬の販売規制や、登録制度の強化、が本格的にはじまり、また、メディアを中心に社会的にも問題が大きく認知されることにより、毒性の強い農薬は今では使われることが無くなりました。
また、残留農薬値の基準は非常に厳しく、決められた使用方法を順守する限り、身体、環境への影響は確認されていませんし、現在ではさらに、作物に残ってしまう性質のもの、土壌に残ってしまう性質のものなどに制限がかけられ、毒性が弱くて残留性の低いものへ多くが移行しておりますが、一度認知された、「農薬=危険」は事実よりも誇大されたイメージで今もまだ、根強く残っているのが現状です。

7倍(比率)の真実

先程記載致しました、日本の農産物の農薬の使用量がアメリカの7倍については、日本がその地形や気候により、作物を栽培するうえで農薬の使用が有効である事が有りますが、世界的に見て、農薬の使用量が多い作物を日本がより多く栽培している事実が有ります。
アメリカの農業のほぼ半分を占める麦類は、もともと病害虫の被害が少なく、農薬の必要性が少ないにも関わらず、果実や米等は、農薬の使用比率が高い為に7倍もの農薬比率(単位面積当たりの使用量)になると言えます。

つまり、このような状況を踏まえ、日本の農産物が農薬へ依存しすぎであるや、まして危険であるとは言えないことは明白です。

安定した食糧の提供。

さらに、食品の安全性と共に私たちが考えなければいけない問題として、「安定した食糧の供給」が有ります。
農薬や、化学肥料を使わない「有機栽培」
しかし、食物が自然の一部である以上、すべてを有機栽培にすることは不可能であり、今、農薬の使用をやめてしまうと、世界は農薬開発以前の食糧が大幅に不足する時代へと逆戻りしてしまうことは明らかであり、果実に至っては、完全無農薬での栽培が不可能なものもあります。
また、有機栽培を行うためには、膨大な労働力が必要であり、値段が高騰する事も考慮せねばなりません。

本当の安全って。

日々進化する技術の中で、今、管理された温度、栄養と、人工的な光。虫が一切入らない建物内部、つまり、野菜工場で栽培される野菜や、遺伝子組み換えにより、害虫からの被害を一切受けない食物が研究され、市場にも流通されております。自然の影響を一切受けず、徹底管理された食物、あるいは、本来持つべき遺伝子を操作し作られた食物が育つ環境には本来存在するはずの食物連鎖は一切存在しません。

「このお米が本当に安全なのか?」「環境に配慮しているお米なのか?」
農薬を使っているから、危険とは言えず、また、農薬を使っていないから安全(環境の観点より)とも言えない状況で、消費者がお米の購入を考える時、その答えを消費者が知ることは非常に難しくまた、生産者が「安全」をアピールする事も同じく困難な状況です。

このような状況を考えるとき、本当の安全と栄養。豊かな自然環境を求める私たちにとって、「有機栽培」は理想です。しかし、全ての作物を有機栽培にする事は出来ず、新しく生み出されつつある技術も未だ完全なものであるとは言えません。

安全な作物を、安定的に供給し、人々に幸福を与える。
このような気持ちを多くの生産者が持っていることは、疑いのない事実です。
農家の多くが経済的に厳しい状況が続き、後継者不足が叫ばれる中、多くの生産者が日々精進し、新鮮な農産物を求める消費者を守り、ひいては、社会を守る礎として、尽力されておられます。しかし、「安全・安心」に対する考えはそれぞれであり、また、多くの基準が存在します。

このような問題を踏まえ、米・食味鑑定士協会が導き出した答え・・・
それこそが、水田環境鑑定士です。

消費者との対話から、いかに消費者が「安全・安心・豊かな環境」を求めているかを知り、しかし、それに対する明確な回答を生産者や流通が提示できていない事を知りました。

「もっと簡単に」 「もっと分かり易く」
お米の安全性という消費者からの疑問に答え、かつ、美しい水田・美しい環境を守り、育ててゆける制度を作りあげることは出来ないだろうか・・・と言う発想がこの水田環境鑑定士という資格の始まりでした。

第一のコンセプトは「水」

植物を育てる上で、最も大切であると考えられる「水」を鑑定し、また、環境に最も影響を受けやすい、「昆虫」「魚類」「鳥類」などを観察記録することにより、水田の安全性と、豊かさを証明しようとするものです。

生態系の大切さ

「生物多様性」は今、自然環境と水田を語る上で非常に重要視されている言葉です。
日本の水田は、「小さな地球」と呼ばれ、生物の多様性において非常に注目を浴びています。
美しい湧き水や、河川の流水がもたらす豊かな微生物や水生生物。それらを食料とし、また、水田を住みかとする昆虫や両生類。さらに、それらを食料とする鳥類や動物。そのような多用な連鎖からもたらされる豊かな自然環境。

そんな環境の中で育成された食物は、豊富な栄養と、人体に影響のある汚染とは程遠い、「安全、安心」そして「環境に配慮した」お米であると判断して頂けると思います。

水田環境鑑定士の活動とは

それらをふまえ、この資格の大きな特徴といえることは、従来からあった「観察・記録」と言う概念だけではなく、当協会のホームページに「水質」「生息生物」の情報を写真で掲載していただくことにより、安全性をより明確に・より信頼を持って、消費者に簡単に確認して頂けると共に、しっかりと証明するシステムを構築していることです 。

水田環境鑑定士の活動内容
  1. 看板の設置‥調査水田である事を示す
  2. 水質の鑑定
  3. 4月頃から9月半ばまでの約半年間水田とその水路における生きものの生態を鑑定・記録。
  4. 半年間の生きものの記録・水質の記録・風景・その他の情報のサイトへのUP
  5. 米袋へのアドレスの添付

 

公開されている水田の一例